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2006年明朗塾運営方針

明朗塾施設長 内藤 晃

はじめに

 平成18年4月、障害者自立支援法が施行される。この法律による制度は、障害福祉サービスを利用する顧客(障害者本人とそのご家族)とサービス提供事業者の利害を対立させる。サービス事業者が高い報酬を求めれば、顧客の負担金額は高まる。一方、例えば通所利用の顧客が、費用負担の軽減と自立への一歩として「世帯分離」をすれば負担金額がほぼ半減することもあるが、相応の負担を社会福祉法人がすることになる。今年3月までの支援費制度では見られなかったシーンが4月以降見られてくる。
 しかし明朗塾は、障害者自立支援法がもつ経済面での対立構造を超えて、顧客に良質な障害福祉サービスを提供していく。なぜならお客様は対立する相手ではなく、明朗塾を支えてくださる方たち、明朗塾にとってなくてはならない方であるから。
 明朗塾は、障害者自立支援法による障害福祉制度・障害福祉施策にあっても障害福祉サービスの提供を通じてつぎの2点の実現を目指す。

  1. 障害者本人とそのご家族に向け安心できる障害福祉サービスや関連サービスを提供し、充実した人生設計の支援をする。
  2. 職員が十二分に力を発揮する環境をつくり、明朗塾の提供するサービスが地域住民の生活になくてはならないものとして継続的改善を施し、持続性を確保する。特に広報を重視することで制度の改変に左右されない強い企業体質を作り上げる。

 なお、運営方針は2000年度から毎年発表しているが、この2006年度運営方針は前年度までの運営方針を否定するものではなく、その方針を踏まえて策定したものである。

1 職員のパーソナリティと就労実績を重視する……安心できるサービス提供のために

1-1 職員を見せる

 組織の最重要要素は人である(いわゆる人財)。職員の活動は組織の活動そのものである。
 組織がどのようなポリシー・使命を持って活動するかの内実は一人ひとりの職員の行動に大きく左右される。したがって企業活動の広報のポイントはいかに一人ひとりの職員、そしてその活動を広報するかにある。
 この観点から明朗塾の一人ひとりの職員を顧客、地域社会に見せていく。見せる内容は職員の「専門性」と「礼儀正しさ」である。
 明朗塾の職員は半年に一度「研究レポート」に取り組んでいる。その専門研究成果はホームページ上や広報紙「めいろう」に掲載して広報する。職員はそれぞれの個性により研究テーマを自由に選択するが、テーマ設定の根幹は「顧客のライフプランナー(人生の設計者)、ライフコーチ(人生の伴走者)となるためのスキルアップ」にある。
 職員のサービス提供業務に対する姿勢のポリシーは『対応の原点として「やさしさ」と「緊張感」をもつ  障害者支援という専門サービスを担う明朗塾は、顧客(障害者)の権利擁護を使命とする(2005年度明朗塾運営方針)』である。自分にしてほしいことをサービスし、自分がしてほしくないと思うサービス(これはサービスとは呼べないが)は決してしない。そして「顧客の家族」「支援専門職としての仲間や後輩、上司」「自分の家族」に胸を張って見せられるような礼儀正しいサービス対応を行う。

1-2 就労実績を見せる

 明朗塾がコミット(宣言)する提供サービスの本質は、「顧客が働くことで自立した人生を設計する支援をします(明朗塾品質方針ISO9001:2000『品質マニュアル第8版』)」である。平成17年度は「明朗塾から一般企業等への就労達成者10名」を目標として取り組んできた。ほぼ達成した。平成11年8月の施設開所から5年余りで就労者5名、ほぼ1年1名の割合であった就労実績が、明確な目標を掲げて取り組んだ結果、成果が上がったのである。目標設定の大切さを改めて感じるところである。
 平成17年度の就労支援には、ジョブコーチをはじめ多くの職員の真剣な取り組みがあった。それまで平均して1年に1名であった就労実績がほぼ10倍になったのだからその取り組みの集中の高さは推して知るべし、である。
 しかしこの日々の取り組みを知る者は明朗塾の中でさえ限られている。したがって「目標を掲げて取り組んでいること」を積極的に外部に示していくことが必要になる。「他人に見えないところで奮闘努力をする」ことは一種の美学であるが、これでは当事者以外認知できない。つまり本人・家族・地域(見込み客)に就労への取り組みを示す「しかけ」づくりをすることが重要である。日頃明朗塾がコミットしている「働くことで……」の支援の実効を伝えていく努力を怠ってはならない。このことは就労移行支援ならぬいわば就労意向支援に通じる。
 就労支援の具体的手法として、「求人情報や就職活動」を、顧客(障害者本人とそのご家族)に知らせるということを確認したい。たとえば、ある方が就労を達成したとする。そのご本人やご家族はこのことについて満足されるであろう。
 しかしそれ以外の方はこのことに対してどのように感じるであろうか。「自分にも将来同じようなチャンスがきっとくるであろう・うちの子もいつか同じように就職できるのであろう」というように他人の就職をきっかけに自分の将来の就職について改めて考えることがあるだろう。これは就労意欲の喚起としても大切なこととなる。
 しかしもし「自分にも同じようなチャンスがあったのであろうか・うちの子にも声をかけてもらえていたのだろうか」と考えるとしたらどうだろう。就労へのプロセスの中に「明朗塾の職員に声をかけてもらえること」「この求人に見合う人材としてこの方がふさわしいという事前選択が職員によってなされること」があるとすればそれは障害者にとって大きなハードルといわなければならない。「職員に気に入られる、職員のめがねにかなう」というプロセスが知らず知らずのうちに入り込む危険性に留意する必要がある。
 職員の中にも「就職したい」と表明する顧客に対して「それは○○先生に頼んでごらんなさい」と話すことが見受けられる。就職は明朗塾の職員に頼み込むことで実現を図ることではない。もしそうならば職員の支援体制が腐敗していることの証明になってしまう。
 求人情報の公開こそ大切なのである。そして知的障害という障害特性によって求人情報の内容を十分理解できない顧客に対して、個別に対応するという職員の努力が必要とされるのである。職員に求められているのは、求人情報をもとにピンポイントで人材を見つけることではなく、求人情報をできるだけ多くの方に伝えることである。
 職員が適材適所という発想をしてもそれは顧客にとっては「ハードル」「障害」でしかないことを銘記すべきである。だから適材を見つけようという発想を捨てなければならない。
 もう一つの具体的手法として、採用・就職の決定権は企業と本人(家族)にあることを確認したい。もともと施設職員には企業が求める人材をあらかじめ選ぶ資格も能力もない。だから求人情報を手にしたときには「求める人材を提供できるかどうか」ではなく「どれほど多くの人材を提供できるかどうか」が「決め手」となる。企業は多くの人材の中から自社に合うと確信した人材を採用する。施設職員に求められるのはできるだけ多くの応募希望者(自施設に所属する顧客に限定せず)を提供する(すべてのカードをさらす)ことである。
 障害者採用を検討している企業側にできるだけ幅の広い選択肢を提供することが大切である。企業がもつその幅広い業務の中には、いたるところに障害者に適した仕事があるはずである。そのすべてが「求人票」に盛り込まれるわけではない。法定雇用率制度に基づき障害者雇用に取り組み模索している企業の「障害者観」「障害者の労働力観」は、福祉施設の職員の持つそれとはかけ離れている。福祉施設と企業のそれぞれの世界が異なるのだから当然である。
 したがって企業が作成した「求人票」に書かれた仕事は、障害者のことを知らないまま書かれたと考えられる。ならば、採用過程を通じて多くの障害者の仕事力を示していくことが重要になることは当然である。一人ひとりの障害者を具体的に知ることで企業は幅広い活動の中から採用する障害者に合った仕事を見つけ出すこともできれば作り出すこともできる。さらにその障害者に合った労働環境を整える覚悟も生まれてくる。
 しかしながら施設職員は「求人票」を天の声、神の言葉のようにとらえてしまう。そしてそこの書かれた言葉をもとに、企業の実情を知らないまま障害者を一本釣りして企業に紹介しようとする。うまくいかなくて当然である。求人への応募のという過程の中で施設職員の持つべき視点は、障害者が10人いれば10とおりの障害があることを企業側に伝えることを通じて、採用担当者の「障害者観」を変えていくことなのである。 

2 周辺業務の充実と販売能力アップを図る……変化への対応に強い企業体質をつくるために

2-1 販売を重視する

 収益力を強化することはすべての企業にとっての課題である。このことは社会福祉法人にとっても例外ではない。企業として永続するためには収益力が必要不可欠である。そのため明朗塾では効果的な販売のしくみを作り上げることを重要課題とする。
 具体的には『お得意様をつくる』ことである。たとえばバザーという販売手法があるが、これに決定的に欠けるのはこの「お得意様をつくる」発想である。偶然目の前を通りかかった方にお買い上げいただくという販売方法を採用するならば永遠に通りかかりのお客様を求め続けなければならない。当然、人通りの多いところを追い求めることになり、うまくいかない原因に「お客が少ない」を持ち出すことになる。
 一度もお買い上げいただいていない方に来店しお買い上げいただくしくみ、一度買ったお客様に、二度目三度目のお買い上げをしていただくしくみ、そして数度お買い上げいただいたお客様にいつも買っていただくしくみをそれぞれ作り上げていくことで、お得意様をつくる。お得意様にとってはそのお店(明朗塾)が日常の生活の中でなくてはならないものになる。明朗塾にとっても当然なくてはならないものになる。お得意様のお買い上げこそ収益そのものであるからだ。
 このような関係性を明確に意識して「販売」を行う。そのためには現在の「生産販売」(明朗塾でつくったものを明朗塾のお店で売る)という形態からの脱皮が必要となる。したがって従来の授産課の構成の見直しを行う。併せて「客単価」の視点をもたずに商売を展開すると、新規顧客を常に追い求めなければならないことになることにも留意したい。
 販売をするときの留意点は「安売り競争」はしない、巻き込まれないということである。商品の価格は顧客満足度で決まるが、その内容は二つに分類できる。ひとつは商品そのものの価値であり、もう一つはその商品を売る営業担当者の説明力(より正確に言うなら「人間としての信頼に基づき、経験に基づく物語性を備えた説明力」)である。前者への取り組みの切り口としてはパッケージデザインの重要性を意識することとしたい。後者への取り組みの切り口としては、上に示した「1-1 職員を見せる」項との連携を意識することとしたい。

2-2 お客様を固定客化する

 前項とも重複するが、明朗塾の障害福祉サービスを利用する顧客を固定化する発想が重要である。いうまでもなく明朗塾は「顧客が働くことで自立した人生を設計する支援」することが中心理念であるから、顧客は将来的には明朗塾からいわゆる卒業をして日中活動の中心軸を施設から企業に移していくことがひとつの大切な進路となる。一方で障害者自立支援法でも示された「就労継続支援事業」のように施設の中にそのまま日中活動の中心軸を据える進路もまた存在する。ただいずれも「働くことで」という共通項がある。
 ここで確認しておきたいことは、顧客が企業へ就労することになっても明朗塾が提供し続けるサービスが存在するということである。生活環境や労働環境の調整などをはじめとして権利擁護に関わることがらは顧客にとって常に必要なことであり続ける(就労移行支援ならぬいわば就労以降支援である)。ここに着目して必要なサービスの提供体制を開発していくことで固定客化することができる。
 また、将来明朗塾を利用することが想定される障害児とそのご家族、施設サービスを利用していない在宅障害者の方にサービス関連情報を積極的に提供する業務もまた重要である。ここでは明朗塾が無認可事業としてではあるが平成15年1月に設置した地域生活支援室MEIの存在意義が大きい。過去3年間に積み重ねてきたノウハウは今後の明朗塾のマーケティングのキーを握る。

2-3 周辺業務の利益創出体質をつくる

 「1-4 企業内企業を設立します。最低賃金を保証すること、地域の在宅知的障害者支援の体制を熟成させること、を方針とした企業内企業(有限会社またはNPO法人)を設立します」(2004年度明朗塾運営方針)に引き続き取り組む。
 障害者自立支援法による施設の指定基準によると、従来入所施設の職員配置基準4.3:1、通所施設の職員配置基準の7.5:1に対して、仮に就労継続支援事業へ移行した場合10:1となる。現在の明朗塾の定員から試算すると、配置すべき職員数は15人から8人となる。自立支援法施行以前は15人の職員が基準上必要だったところが8人ですむことになる。この職員の配置基準の変化を「好機」ととらえたい。7人の職員は障害福祉サービス事業をはなれそのまま周辺業務に携わることができる。自立支援法施行以前ならば、企業内企業のための職員は新規採用しなければならなかった。ところが、現在の職員陣容のまま多角経営が可能となったのである。
 とくに職員の技能を活かした周辺業務の開発をすることで企業としての利益創出体質をつくることが容易になったのである。そして周辺事業においては、障害者雇用を実践することも可能である。この実践を通じて安心して障害者雇用をするための企業支援のシステム開発をすることができる。労働者としての障害者の労務管理は企業の仕事であるがこれへの福祉専門分野からのかかわり方や社会保険労務士との連携による補助金活用のノウハウに関連することも併せて深めていくことが可能となる。
 明朗塾では、平成17年11月においしい課を設立し宅配弁当業務に着手した。調理職員の高い技能があればこその展開である。このほか、BDF(食用廃油の軽油代替燃料)再生事業や各種メンテナンス・管理業務等への展開により収益力のある企業を目指す。
 そして明朗塾で働く職員の一人ひとりが幸せで豊かな人生を送ることを保証する。このことこそ職員が顧客に対して「働くことで自立した人生を設計する」ことの楽しみと夢を本心から本気で語れるようになる一番の道であると確信する。