創業理念を基底とした
良知に従った支援実践

社会福祉法人光明会
理事長 小澤 定明

 光明会の経営の原点は「何があっても見捨てない」という人情にあり

光明会の創業理念をご理解いただきたく、私の昔話に少しお付き合いください。
今から40年近く前の話になりますが、民生委員児童委員をしていた頃の話です。

私が担当する地区に引っ越してきたばかりのAさんがいました。隣近所とも付き合いがなく、近所の方からもAさんのことは口を揃えてよく分からないと言っていました。Aさんの担当となりましたので自宅に訪問すると犬や猫の糞尿のような異臭を感じました。確信はありませんでしたが、ただ事ではないと察し、Aさんの静止も振り切り奥の襖を開けました。そこには座敷牢があり、重度の障害のあるお子さまが横たわっていました。

数日後、何とかAさんとお子さまを支援したいと行政とも相談し、再度Aさん宅を訪問した時には、もぬけの殻でした。ここからは推測ですが、重度の障害のある子どもを知られてしまった以上、隣近所の目を気にされ引っ越さざるを得なかったのではないでしょうか。その時、私は障害のある子どもも家族も、お天道様の下で堂々と暮らせる世の中にしたい、そんな世の中を必ず作るのだと決意しました。この体験が平成11年8月1日に開設した知的障害者入所授産施設の設立につながっています。

良知に従い自ら率先する支援実践が創業理念を体現する

法人が経営する事業は障害者の就労支援を中心に多岐にわたるようになりましたが、今でも創業時と変わらぬ志と福祉の心をもって法人経営を行っております。

私の心に深く刻まれた話をご紹介いたします。

医学から文学に進まれた加藤周一氏の「文学の仕事」の中に「孔子の牛のはなし」があります。「孔子は重い荷物に苦しんでいる一頭の牛を見て、かわいそうに思って助けようと言った。すると弟子は中国にはたくさんの牛が荷物を背負って苦しんでいるのだから、一頭だけ助けたってしようがないのではないかという。孔子は、しかしこの牛は私の前を通っているから哀れに思って助けるのだと答える。」という一説です。

私は、支援を必要とする、困っている人がいれば「放っておくことなどできない」と心の奥底から湧き出るような思いを原動力にここまで歩んできました。今この場で起こる目の前の支援に対して、良知に従い全力で取り組むことこそが重要であるという教えと捉えています。

 光明会独自の価値をもって地域貢献する

光明会が組織として責任を果たす目的は、顧客の利他的活躍するその姿から社会に勤労観(勤労を尊ぶ態度)と職業観(あらゆる職業の意義を敬う態度)を伝道することにあります。

これまで地域に暮らす人々から「光明会は地域にとっての共有財産」と信じてもらえるかどうかは、光明会さんと、人々からさん付けで呼ばれるかどうかが光明会の価値を決める尺度の一つと捉えて取り組んでまいりました。今後はさらに顧客が地域に暮らす人々からさん付けで呼ばれる地域貢献を志してまいります。