1 「公文プログラム」を作るココロ

◆ 「その人」の障害や病気が軽くなり、もっと「その人」の人生が豊かなものとなるために、公文式の教具や教材をどう活用するか?

◆ 「何ができなくなっているか」ではなく、「今なお何ができるか」に注目して、学習の目標を立てる。できた喜びが自信につながり、その自信がたがて自己回復につながる、それを信じて。

学習の目標は、長期→中期→短期で立てる。「こんな成果を、この時期までに出したい」という姿勢を持ちたい。「その人」だけでなく、「その人」を援助する者にも達成感が必要だから。また、「その人」の回復を待ち望む家族や友人にも希望が必要だから。

◆ 目標に応じて、「公文プログラム」をつくる。

プログラムは、ムリなく・ムラなく・そしてムダなくを心がける。十分な観察・細やかな記録・冷静な分析が、より効果的なプログラムを生み出しつづける。

   「ムリなく」の中には、作業力や理解力だけでなく、「体力」が含まれる。

   「ムラなく」の中には、一つひとつの「ねらい」をはっきりさせることが含まれる

◆ 患者や利用者は、さまざまな治療や訓練や教育の機会に囲まれている。公文式が、他の方法・手段と連動して活用されたら有難い。「その人」を取り囲む、ホットなチームをつくりたい。チームワークで行えば、「その人」の援助が「ムダなく」できる可能性が広がる。

2 具体的な留意点

★ 学習目標は、スタッフ・家族・本人と共有する。

★ 「マンツーマン指導」と「集団指導」−あくまで個人別を追及する。

★ 「公文式で学習できる時間・期間の長さ」に応じて目標を立てる。

★ 指導スラッフ同士の連携を強める。また、他の職員と協働する。

★ 公文式と他の療法・指導とを、うまくかみ合わせる。援助者は大勢、けれども学習者は一人。

★ 「その障害」「その病」の特徴と注意点には、いつも気をつける

★ 「公文タイム」や「公文室」を確保する

★ 学習者の特徴や学習目標にかなったレイアウトを工夫する

★ 学習の初めに「今日の流れ」、終わりに「今日の良かった点」を伝え、自覚的な学習を促す

★ 記録を取る。学習時間・内容・プラスの変化と課題を記入する。ただし記録はためこまない

★ 学習したプリントを眺める。そして、「できていること」と「これからの課題」をつかむ

★ 「ズンズン教材」の可能性を探る。線引き教材から「心の教材」へと使い方を広げる

★ やる気が出るための声かけや対応の工夫を絶えずする

★ 「学習者の好調なときは慎重に、不調な時は大胆に」のココロで計画を練る。

★ 家族にも他の職員にも「成果を見せる指導」をする。良い結果が信頼と期待を増す

★ 教材解法は利き手外で行う、学習者の辛さが分かり、目線が低くなってマンネリ化が防げる

「公文プログラム」の紹介 −教具「トントンくるりんLB」の活用例−

〈背景〉

  • もともと言葉があまりなかった。
  • これまでは、落花生の殻剥き作業の場に居るだけとか、食堂の清掃時にイスの上げ下ろしをするだけの存在。
  • 「仕事をする意欲(意識)がある人を受け入れるのが、授産施設としての方針。だから、ただ居るだけでは授産施設に向いていないだろうと考えられていた。

〈学習目標〉

  • 集中力をつける。
  • 道具をうまく使えるようにする。

〈公文プログラム〉

◆  「トントンくるりんLB」で遊ぶ

  1. 箱の中から取り出して、自分で組み立てる。(球を受ける台の取り付け方を、教わらずに自分で覚えた)
  2. 5個の球を穴の上に載せる。(載せるとき、手だけで球を押し込んでしまうことがある)
  3. トンカチで叩くのは利き手の右手。両手がうまく使えるようにするために左手で叩くことを促してみるが、嫌がる)
  4. 球が途中で止まってしまうことがある。その時は、動いて下の穴から出てくるまで眺めていることが多い。
  5. 最近、反対側の穴から出てくる球を、手を回して探ることが増えてきた。

〈「トントンくるりんLB」開始後の変化〉

☆ 集中力が、2〜3分から30分以上に延びてきた。

☆ 笑顔が出たり、声を出して笑ったりするようになった。

☆ テレビを見ながら、合わせて歌を歌うようになった。

☆ 「トイレに行きたい」「ジュース代をください」と自分で言えるようになった。

☆ 自分でほうきとちりとりを用意し、他の人が掃き集めたゴミをちりとりで取り、ゴミ箱へ持っていけるようになった。

〈今後の方向性〉

★ 公文を含めて一番成長した人のように思える。

★ 就労は難しいかもしれないが、意欲的に作業に取り組むようになったので、この施設でさらに成長していく方法を考えている。

★ 今後、もっと集中力を高めたい。また、本人が訴えることを増やしていきたい。

穴の上に球を載せていく

利き手の右手で球を叩く

止まった球が動き出すのを眺める

手を回し、出てくる球を探る