[HOME] - [研究レポート] - [齋藤義秋]

知的障害者施設における
ケアマネージャーの必要性と個別支援計画

社会福祉法人  光明会
障害者支援施設 明朗塾
主任指導員 齋藤義秋

1 章 はじめに
2 章 ケアマネージャー
1. 介護保険制度
2. ケアマネージャーとは
3. ケアマネージャーの仕事の流れ
4. ケアマネージャーになるには
5. ケアマネージャーの活躍の場
3 章 障害者ケアマネジメント
1. 障害者ケアマネジメントの必要性
2. 障害者ケアマネジメントとは
3. 障害者ケアマネジメントの流れ
4. 障害者ケアマネジメント従事者
4 章 個別支援計画
1. 個別支援計画とは
2. 処遇計画と個別支援計画との違い
5 章 明朗塾における個別支援計画書作成
1. 個別支援計画書作成までの歩み
2. 個別支援計画書の比較
3. 個別支援計画書の書式
4. 個別支援計画書の記入説明
5. 個別支援計画書の作成状況
6. 個別支援計画書の問題点・改善点
6 章 まとめ
1. 障害者施設におけるケアマネージャーの必要性
2. おわりに
 参考文献

[TOP]

1章 はじめに

将来、自分自身が知的障害者福祉だけではなく、高齢者福祉や総合的な福祉について幅広く勉強したいと考えていたときに、高齢者福祉にケアマネージャー(介護支援専門員)という資格があることを知った。いずれ知的障害者も高齢化が進み、支援・指導だけではなく介護が必要となる。
高齢者福祉分野の初歩的な資格となるホームヘルパー(訪問介護員)2級課程を平成16年1月に取得し、知的障害福祉分野において、この資格取得で学んだことが応用できるのではないかと感じた。特にベットメーキングやシーツ交換、入浴介助などである。
2003年4月に障害者分野も利用契約制度として支援費制度が開始され、利用契約時には個別支援計画の提出が必要となる。私自身も明朗塾において個別支援計画書作成に関わり、個別支援計画書は誰が作成しなければならないのか、なぜ知的障害者福祉にケアマネージャーが存在しないのか疑問に思った。
高齢者福祉にはケアマネージャーという資格があるが、障害者福祉にはこのような専門の資格が無い。このことから今回の研究レポートのテーマとした。


[TOP]

2章 ケアマネージャー

2−1:介護保健制度

 介護保険制度とは「1997(平成9)年12月に法案が成立。市町村を保険者とし被保険者を第1号被保険者(65歳以上の者)、第2号被保険者(40〜65歳未満の者)と区分、今後予想される高齢者(要介護者)対策の一環で、寝たきりや痴呆など介護を必要とする人に対し、介護サービスの提供や施設の入所といった介護保障を社会保険方式により行う制度であり、2000年4月から施行され、40歳以上の人は、毎月決められた額を支払う。介護保険を受けられるのは、65歳以上で介護が必要とケアマネージャーから認知された者であった。」

(『社会福祉用語辞典』社会福祉士受験対策研究会、棋苑図書、2000年2月、P39)

2−2:ケアマネージャー(介護支援専門員)とは

ケアマネージャーとは「介護保健制度のもとで要介護者の相談に応じて、サービスを提供し、ケアプランの作成などを行う専門職で、厚生省令で定める者をいう。おもに、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・保健師・社会福祉士・介護福祉士・理学療法士・作業療法士など。5年以上の実務経験がある者は、国家試験を受ける資格を有する。」 

(『社会福祉用語辞典』社会福祉士受験対策研究会、棋苑図書、2000年2月、P38)

 「ケアマネジメントする人。介護保健制度ではこの働きをする人をケアマネージャーと呼び、保健・医療・福祉など幅広い職種を対象としている。ホームヘルパーも実務経験を満たせば受験資格がある。」 

(『訪問介護員養成研修テキストブック2級課程』ミネルヴァ書房、2003年7月、P427)

2−3:ケアマネージャーの仕事の流れ

【第一段階】介護保険の申請〜要介護判定まで

ケアマネージャーによる認定調査

サービスの必要な方が介護保険のサービスを利用するためには、最初に「介護が必要である」と認定される必要がある。申請すると、次の流れで認定される。

?@市町村の窓口に介護サービス申請をする。
?A申請者は認定調査を受ける。
?B調査表を元にコンピューターで一次審査。
?C認定審査会(専門家5人程度)による二次審査。
?D認定結果が申請者に通知される。

 ケアマネージャーは、?@の申請代行のほか、?Aの「認定調査」を行うことができる。つまり認定調査は、市区町村の担当者か、または市区町村の委託を受けたケアマネージャーが、申請者の家庭へ訪問することになっている。認定調査では、視力などの身体機能、立ち上がりなどの基本動作、食事や排泄などの日常生活動作、記憶や理解など79項目に渡り調査する。調査に当たるケアマネージャー4は、全国共通の「認定調査表」に調査結果を記入し、選択式回答に盛り込めない情報は「特記事項」に書き込む。

【第二段階】認定〜サービスの利用まで

ケアプランの作成・実施・管理

 要介護・要支援と認定された人は、要介護度に応じた限度額内であれば、かかった費用の一割負担でサービスが利用できる。その際、どんなサービスをどのくらい利用するかという介護サービス計画(ケアプラン)を作ることが必須になる。このケアプランを作るのがケアマネージャーである。

(1)ケアプランの作成
 ケアプランを作成するに当たっては、ケアマネージャーは本人や家族と話し合いながら、課題の分析・ニーズの把握を行い、最適なケアプランを作る。これがケアマネージャーの一番中心になる仕事である。ケアプランの善し悪しで、介護の効果が違ってくる。また、本人や家族の納得のいくものに仕上げる必要がある。そのためにケアマネージャーは本人や家族をはじめ、医師や看護師、サービス事業者、ボランティアなどを集めて「サービス担当者会議」を開く。どんなサービスをするかを周知させたり、専門家や担当者の意見を聞いたり、本人や家族が専門家や担当者に聞きたいことや要望を出したりして、ケアプランをよりいっそう練り上げ、何曜日の何時に何のサービスをするかなど具体的なサービス内容を詰めていく。

(2)ケアサービスの実施
 サービスを実施に移すに当たり、ケアマネージャーは本人の代わりにサービス提供機関へ正式にサービスの依頼をする。そこでサービスの時間帯が合わなければ時間や曜日をずらしたりの最終的な調整をして、いよいよサービス内容が確定する。
 サービスの内容や利用する回数といったケアプランは、通常1週間単位で作成し、本人が利用するサービスの種類や利用機関、曜日や時間帯まで詳しく「サービス利用票」に記入する。

(3)ケアサービスの管理・調整
 ケアサービスが決められたようにきちんと行われているかを定期的にチェックすることもケアマネージャーの大切な仕事である。それと同時に、要介護者の生活の質が高まっているか、自立して生活する方向へ向かっているかなど、ケアサービスの効果も把握しておく必要がある。その変化によってはケアプランを再検討しなくてはならないからである。その調整もケアマネージャーの仕事である。


(『ケアマネージャー講座案内資料』生涯学習のユーキャン、P4)

2−4:ケアマネージャーになるには

介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、原則として3日間の実務研修を2回(合計32時間以上)受けて初めてケアマネージャーになる資格が与えられる。

試験名 介護支援専門員実務研修受講試験
受験資格 介護や保健医療、福祉の仕事に携わっている方で、規定の実務経験を5年または10年以上有する方。(保有する国家資格により科目免除有り)
実施時期 年1回
願書受付 試験の2〜4ヶ月前
合格発表 1〜2ヶ月後
試験形態 マークシート方式(五肢択一と五肢複択)
試験時間・問題数 フル解答者で全60問、2時間
合格基準 未発表のため正確ではないが、約8割の得点が必要と言われている。

【受験者数と合格者数】
 
受験者数
合格者数
合格率
第三回(平成12年度)
128、153
43、854
34.2%
第四回(平成13年度)
92、735
32、560
35.1%
第五回(平成14年度)
96、207
29、505
30.7%
(『ケアマネージャー講座案内資料』生涯学習のユーキャン、P6)

2−5:ケアマネージャーの活躍の場

ケアマネージャーとして働く職場は次のような所がある。
?@市区町村の保健福祉センターや保健センターなどの公的機関
?A在宅介護支援センターや訪問介護ステーション、社会福祉協議会などの指定居宅介護支援事業者
?B介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など介護保健施設
?C指定居宅介護支援事業者や指定居宅サービス事業者に認定されれば、一般病院や診療所、ホームヘルパー派遣会社、福祉用具の販売・レンタル会社、有料老人ホーム、デイケアサービス、移送サービス会社、などの施設や事業者も当然範囲に含まれる。

介護保険が順調に運営されていけば、将来ケアマネージャーとして独立開業する人も出るだろうと予想されている。独立開業が予想されるのは、ケアマネジメントがそれだけ介護保険制度で重要な位置を占めていること、ケアマネジメントの質に大きな格差が出やすい分野であるからである。

(『ケアマネージャー講座案内資料』生涯学習のユーキャン、P5)


[TOP]

3章 障害者ケアマネジメント

3−1:障害者ケアマネジメントの必要性

 障害者が地域で支援を受けようとする際に、地域ではサービスが広く散在しているため、サービスを利用しにくい状況にある。したがって、障害者が地域で生活することを支援するためには、生活ニーズに基づいたケア計画にそって、複数のサービスを一体的・総合的に提供する必要がある。

 障害者は、地域で自分らしく主体的に生活することを望んでおり、単に福祉サービスを提供するだけでなく、障害者のエンパワメントを高める視点から福祉・保健・医療・教育・就労等のさまざまなサービスを提供する必要がある。

 障害者ケアマネジメントは、このような視点からケア計画を作成してサービスを提供する方法であり、さまざまな生活上の課題がある中で、自ら希望する生活を模索していく障害者の地域生活を支援するためには、障害者ケアマネジメントの援助方法は不可欠である。

 障害者の生活ニーズと合っていないサービスが提供された場合には、サービス提供者と調整し、適切なサービスが提供されるよう働きかける必要がある。その際に、障害者自身がサービス提供者と調整するのが難しかったり、自分自身の意思を伝えられなかったりすることによって、障害者の抱えている課題が解決されないこともある。

 障害者ケアマネジメントは、障害者の権利擁護の観点に立って、生活ニーズと社会資源を適切に結びつける昨日を持っている。障害者の自己決定・自己選択を尊重するためにも、障害者ケアマネジメントの援助方法を導入する必要がある。

 (北野誠一・大谷 悟・西岡 務 『障害者ケアマネジメント実践事例集』中央法規、2003年4月、P270)

3−2:障害者ケアマネジメントとは

 障害者ケアマネジメントを簡潔に表現すると、「障害者の地域における生活支援するために、ケアマネジメントを希望する者の意向を踏まえて、福祉・保健・医療・教育・就労などの幅広いニーズと、様々な地域の社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけて調整を図るとともに、総合的かつ継続的なサービスの供給を確保し、さらには社会資源の改善及び開発を推進する援助方法である。」といえる。

 障害者ケアマネジメントは、以下の点を考慮しながら実施される。

(1)障害者の地域生活を支援する
(2)ケアマネジメントを希望する者の意向を尊重する
(3)利用者の幅広いニーズを把握する
(4)様々な地域の社会資源をニーズに適切に結びつける
(5)総合的かつ継続的なサービスの提供を確保する。
(6)社会資源の改善及び開発を推進する

(北野誠一・大谷 悟・西岡 務 『障害者ケアマネジメント実践事例集』中央法規、2003年4月、P270〜P271)

3−3:障害者ケアマネジメントの流れ

 障害者の地域生活を支援するために、希望する利用者の意向をふまえて実施されるケアマネジメントは、時間の流れにそって、問題解決の状況を見きわめながら、一定の手順と方法をもって提供される。一般的に次の五段階に整理される。

?@インテーク(相談受付から導入への見きわめ)
 相談受付の段階で、相談機関を訪れた人がケアマネジメントを必要としているかどうかの判断を行う。「相談面接」という形をとって、相手の抱えている問題状況や情報の提供・収集を行うことになる。

?Aアセスメント(課題分析)
 利用者固有の「生活ニーズ」を把握し、そのニーズを妨げている要因が何によってもたらされてきているのか明らかにし、ニーズを充足するための援助方法を検討する。アセスメントの視点として、利用者の「できない部分」ばかりに着目するのではなく、「より豊かな部分」についても着目することが大切である。アセスメントではアセスメントシートを用いて、情報を得るための連絡・連携、必要に応じて「サービス担当者会議」を開催する。

?B個別支援計画(ケアプラン)作成
 アセスメントを基本にして、個別支援者は個別支援計画を作成する。具体的には、利用者が地域でどのような生活を送ることを希望しているのかを明確にして目標を設定する。利用者の参加を得て、本人の意思や意向を十分に尊重して作成し、最終的には利用者の合意を得たものが個別支援計画として採用される。

?C個別支援計画(ケアプラン)実施
 計画に位置づけられた社会資源が利用者の立場に立って有効に機能しているかどうかが、個別支援者の課題となる。個別支援計画の実施に向けて何よりも大切なことは、ケアマネジメントを実施する機関と事業所との連携である。それは、ケアマネジメントの目的が単にサービス提供の調整だけでなく、個別援助のソーシャルワークの内容を質的に発展させることを目指しているからである。

?Dモニタリング(継続的な管理および評価)
 個別支援計画にもとづき、当初の計画どおりにサービスの提供が行われているかどうか、確認することが大事である。また、利用者の心身の状況や家族の介護状況の変化などの情報交換を通して、新たな生活ニーズの把握を行う。必要に応じてサービス調整会議を開催して調整を図り、計画の見直しを行う必要がある。一般的に評価とは、事前評価に対する事後の評価と理解されている。

支援費制度では、支援費の支給を決定する際に用いられる「勘案事項調査」および「障害程度区分を認定するための調査」項目と「個別支援計画」作成のためのアセスメントシートとが一体化されていない点が大きな問題点であり、改善に向けての検討が必要である。

(植田 章・峰島 厚 『個別支援計画をつくる 利用契約制度と障害者ケアマネジメント』かもがわ出版、2004年4月、P18〜P24)

3−4:障害者ケアマネジメント従事者

 第1章の「はじめに」という項目にて、「高齢者福祉にはケアマネージャーという資格があるが、障害者福祉にはこのような専門の資格が無い」と記述した。しかし、今回の研究テーマについて調査した結果、「障害者ケアマネジメント従事者」という資格が存在することを改めて知った。厚生労働省は1998年度から「障害者ケアマネジメント従事者」についての養成研修を始め、対象は主に授産施設や障害児通園施設の職員、市町村の福祉担当者などである。障害者のケアマネジメントは、高齢者を対象にした介護保険のマネジメントとは別のものであるということをはっきりさせるため、ケアマネージャーという呼び方を改め、従事者と付け加えて明確にしている。

 障害者ケアマネジメント従事者は、障害分野に関する相談等の業務について相当程度の実務経験を有するか、または社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、作業療法士、理学療法士、保健師、看護師等の一定水準以上の専門的知識や技能を有する者について、都道府県および指定都市が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成研修を受講することによって、資質の向上に努めるべきである。
(北野誠一・大谷 悟・西岡 務 『障害者ケアマネジメント実践事例集』中央法規、2003年4月、P278)

都道府県・指定都市が実施している障害者ケアマネジメント従事者養成研修修了者数
  10年度 11年度 12年度 13年度 14年度
所    属 身体 知的 精神 身体 知的 精神 身体 知的 精神 3障害合同 3障害合同
更生相談所 186 377 168 825 1,120 1,197 1,613 1,845 1,772 48 46
福祉事務所 651 956
公立の社会福祉施設 644 676
民間の社会福祉法人 2,215 2,759
保 健 所 514 355
精神保健福祉センター 41 50
社会復帰施設 435 462
病    院 689 732
行政機関 2,182 2,628
そ の 他 1,089 1,036
小    計 186 377 168 825 1,120 1,197 1,613 1,845 1,772 8,508 9,700
合    計 731 3,142 5,230 8,508 9,700
総 合 計 27,311
※都道府県及び指定都市が実施している「養成研修」では、14年度末までの4年間に27,311名が修了している。
※平成13年度からは、都道府県等において国の実施要綱に基づき3障害合同の研修が実施されてきており、障害分野別の受講者数は把握できない。
※平成12年度以前の各自治体毎の研修受講者の所属内訳は把握していないが、13年度からは国と同じ分類での報告を受けている。

http://www.mhlw.go.jp/index.html 厚生労働省HP)


[TOP]

4章 個別支援計画

4−1:個別支援計画とは

 利用者が施設利用を希望し、市町村から支給決定され契約を行う場合、施設は利用者の自立支援のために利用者の意思や希望を尊重し、利用者と同意のうえで「その人の希望や生活ニーズに対して目標を設定し、その人が望む生活を支援するサービス提供計画」を作成する。このサービス提供計画のことを「個別支援計画」という。

 これまでの措置制度は、行政(市町村や福祉事務所)が障害者やその家族からの申請に基づいて、どの施設のサービスを利用したらよいかを行政処分によって決定してきた。

 利用契約にあたっては運営目的、機能を利用者に理解していただき、利用者が将来の自分自身の方向性を確認することが必要となる。契約書の内容は、
?@契約の目的
?Aサービス利用と料金
?B事業者の義務
?C契約者の義務
?D損害賠償
?E契約の終了
?Fその他苦情解決等が盛り込まれる。

個別支援計画書は利用者の希望・ニーズをもとにしたサービス提供内容と支援目標に基づいた計画を記載したものである。それゆえ、支援計画書はサービスそのものであり、利用者が選ぶ商品であるといえる。

(『社会就労センターのモデル個別支援計画』全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会、2002年11月、P13〜P15)

4−2:処遇計画と個別支援計画との違い

  講師松端克文氏(桃山学院大学専任講師)は処遇計画と個別支援計画の違いを次のように挙げている。

「処遇計画」 「個別支援計画」

本人の「できないこと」や「問題行動」に着目

本人の望む生活が実現できるような支援を行うための計画

本人が○○できるような指導・訓練・学習を計画化=本人の努力が前提

「何ができないかではなく、どんな支援があれば何ができるか」ということを焦点に

施設の既存の日課・プログラムに適応するような内容

「どのような支援が必要か、どの程度の支援が必要か」という観点からの計画化

受け持ち担当者が作成

本人を中心に本人に関わる人たちで協議して作成

不十分なモニタリング

モニタリングとそれをふまえた計画の見直しをプロセス化

(松端克文 『個別支援計画書の書き方とケース会議の進め方資料』?X日総研出版、P2)

[TOP]

5章 明朗塾における個別支援計画書作成

 明朗塾で取り組んできた個別支援計画書作成までの歩みを次の一覧にした。

年 月 作成状況
14年10月 個別支援計画作成のため、大阪障害者ケアマネジメント協会が推奨する様式を使用。(職員研究レポートより)
14年11月 個別支援計画書作成の設計メンバー5名が編成され、ISO資格認定のため、顧客2名分を早急に作成することになった。
14年12月 個別支援計画書作成プロセスにおいて、顧客2名分の個別支援計画書を作成。
明朗塾の品質マネジメントがISO資格認定を受ける。
設計メンバー1名が退職。
15年1月 社会就労センターのモデル個別支援計画の書式に変更。
15年3月

日総研主催の研修会に参加。講師松端克文氏(桃山学院大学専任講師)の松端式個別支援計画書の書式を採用。
アセスメントシートに「学習」項目を追加。

15年3月 各ケース担当に個別支援計画書作成を依頼。
設計メンバー2名が退職。
15年4月 退職者分の個別支援計画書を他の指導員にひきつぎ。
15年5月 設計レビュー前の完成度が平均で69.9%(100%完了が15名分)と低く、「個別支援計画書作成のための手引き」を配布。
15年6月 「個別支援計画書のレビュー手順書」を配布。
設計レビューの1回目実施。
15年7月 設計レビューの2回目実施。
15年10月 指導員3名が退職。職員不足により個別支援計画書作成が一次中断される。
16年2月 個別支援計画書内の契約提示用の個別支援計画書式を大幅に変更。支援・指導定期報告書とリンクできるように見直しした。
16年3月

施設長より個別支援計画書は測定可能な目標を設定することを保護者会と広報紙めいろうにて発表。
契約提示用の個別支援計画書式に目標設定項目を追加。

16年4月

契約提示用の個別支援計画作成開始。
顧客との契約開始。

16年5月 15名の顧客と契約終了。

5−2:個別支援計画書の比較

 個別支援計画書にはあらかじめ指定された書式がなく、明朗塾の個別支援計画書作成にそれぞれ関与した個別支援計画の書式を比較した。

書式比較表
区 分

障害者ケアマネジメントの
ケアガイドライン様式

社会就労センターの
モデル個別支援計画

松端式
個別支援計画書

相談受付票    

一次アセスメント票

二次アセスメント票    
週間ケア計画表    
フェースシート  
関係者・機関に求めたい情報    
支援計画書
年度別支援計画整理表    
作業内容説明書    
支援実施書    
支援計画に具体化されなかった
ニーズ
   
モニタリング記録表    
長 所

?@地域で生活する障害者向けに作成されている。
?A障害者ケアマネジメント従事者用の書式である。

?@社会就労センター向けに作成されている。
?A支援目標にて長期と短期目標を設定している。

?@書式がすべてA4サイズの縦書きである。
?A全体のページ数が少ない。

短 所

?@書式が縦・横書きと統一されていない。
?A地域で生活する障害者向けに作成されているので、明朗塾での個別支援計画書には不向きである。

?@書式がすべてA4サイズの横書きで見づらい。
?Aページ数が17ページと多い。

?@支援計画書の項目についての記入や表現方法が難しい。
?Aアセスメントシート項目に記入欄が多く、文章力が必要。


5−3:個別支援計画書の書式

 明朗塾の個別支援計画書の書式として、松端式個別支援計画書を採用した。採用した理由としては私自身がこの個別支援計画書の研修会に直接参加して学んだことが要因となった。また強度行動障害の方の個別支援計画の事例が記載されていたことも大きな理由であった。
 下記の表は明朗塾の個別支援計画書の書類内訳表である。

個別支援計画書の書類内訳表
書類名 枚数 内容および特徴
?J.表紙 1枚 作成、審査、承認欄および添付書類一覧表を記載。
?K.フェースシート 1枚 顧客情報が中心で家族構成や障害区分、健康状態などを記載。
?L.アセスメントシート 5枚

?@本人の思い・意思の確認 ?Aコミュニケーションの状況
?B日常生活の状況についての支援内容と課題について記載。
?C社会生活 ?D自己指南性 ?E健康についての支援内容と課題について記載。
?F社会参加 ?G作業・就労 ?H学習についての支援内容と課題について記載。
?I家族との関係 ?J問題行動
?K安全管理・事故防止上の留意点についての支援内容と課題について記載。
?L日課・日中活動についての支援内容と課題について記載。

?M.個別支援計画書 1枚 施設利用への顧客の意向、総合的な支援の方針を記載。
健康、生活、学習、作業、就労、地域生活、その他の項目についてのニーズ、支援目標、
支援内容を記載。
?N.モニタリング記録表 1枚

ニーズの充足度、今後の課題、次回のモニタリング時期について記載。
ケース会議実施記録の記載。


5−4:個別支援計画書の記入説明

 ケース担当者が責任者となり、それぞれ作成を開始したが、誰もが顧客に提示する「?M.個別支援計画書」の記入に四苦八苦していた。アセスメントシートの内容がそこで反映されていないことと、記載する項目内容の的を絞れないことが原因と思われる。そのため、書式の内容を変更しモニタリング記録表を追加した。

 変更した書式は、社会就労センターのモデル個別支援計画の書式を基本とし、健康・生活・学習・作業・就労・地域生活・その他の7の項目にニーズを区分した。さらに国際規格であるISO9001に準じて、支援目標が達成されたかどうか測定できるような目標に設定し、支援・指導定期報告書とリンクできるような書式にしている。これは明朗塾だけのオリジナルとなる。



5−5:個別支援計画書の作成状況(平成16年5月6日現在)

?@完成率  個別支援計画書の完成率について表にまとめた。
利用区分 作成予定人数 承認済 完成率
入所 37 18 48.6%
通所 22 4 18.2%
合 計 59 22 37.3%

?A目標設定  支援目標をニーズの項目別に集計した。

区  分
健 康
生 活
学 習
作 業
就 労
地域生活
その他
設定数
6
17
1
2
5
11
5
割  合
12.8%
36.2%
2.1%
4.3%
10.6%
23.4%
10.6%
結果・・・生活と地域生活についての目標設定が高く、作業に重点を置いた目標設定が低い。

?B支援目標
  主な支援目標の内容を抜粋してまとめた。その他の区分項目はここでは除外している。
区分 支   援   目   標
健康 1年間で3キロの減量ができるように支援する。 月に2回、看護部長と健康相談を実施し、その結果をケース記録書に記録する。 22時の消灯時間までに遅番職員が就寝準備の確認と支援を実施する。 月1回、浅井病院での理学療法を実施する。 毎日1回の検温と様子観察を看護部長が実施する。
生活 本人の行動等に変化が見られた場合には相談援助等を実施して原因を追求し、その経緯を記録する。 洗濯物管理については構造化し、本人に合った行動パターンの支援を担当がケース記録書に記録する。 月に2回、ケース担当がロッカー内を点検し、職員と一緒に整理清掃を実施する。 毎月大掃除の際に職員と一緒に居室の整理清掃等を実施し、その結果をケース記録書に記録する。 学習時間と夕食後の自由時間に職員を1名配置し、定期的な巡回を実施する。
学習 毎月10セット以上の教材補充と採点を採点職員が実施する。        
作業 毎月1回、作業評価表を提示し、内容について説明する。その結果をケース記録書に記録する。 受託作業で1時間以上作業に集中できるように作業担当が指導し、その記録を作業評価表に記載する。      
就労 年3回、企業見学・職場体験等を実施し、見学レポート指導を通じ、就労意識の向上を図る。 高齢者施設や他の企業見学等を年4回実施する。 1年以内に職場体験を実施する。    
地域
生活
月2回の余暇活動支援を実施し、その結果を担当した職員がケース記録書に記録する。 年2回、グループホーム体験入所を実施する。 年2回の家庭訪問を実施し、その結果を家庭訪問記録書に記録する。 毎月1回の帰宅訓練と年2回グループホーム見学を実施する。 2ヵ月に1回、ケース担当が外出訓練を実施する。

5−6:個別支援計画書の問題点・改善点

問題点

?@アセスメントシート項目に記入欄が多く、文章力が必要。
?Aアセスメントシートの内容から直接ニーズを把握できない。
?B個別面談や家庭訪問にて、ニーズを調査する機会が必要。
?Cニーズを記録するシートが必要である。
?D個別支援計画書の中身は記載する担当者によってバラツキが見られ、文章表現も統一されていない。
?E授産施設として、作業の項目に対しての支援目標が少ない。

改善点

?@アセスメントシートの書式を社会就労センターのモデル個別支援計画を基本に変更を加える。
?Aニーズを記録するシートを作成し、毎年決まった時期に調査する機会を設定する。
?B個別支援計画書を作成する担当者を1〜2名に設定し、支援内容や文章表現を統一する。
?C作業指導での支援目標(測定できるもの)を1名に1件設定する。

 特に作業指導での目標設定が少ないことに疑問を感じた。明朗塾の現在の授産体制は職員が中心である。職員の働きによって利用者の工賃額が決定される。いわば利用者は職員の補助としての役割でしかない。いったい作業指導とは何であるのか、どの授産事業でも言えることは指導員がじっくりと作業指導する時間や余裕がないことが、作業指導において目標設定が少ない理由と考える。

 自動車教習所のイメージで考えると、運転手は利用者であり、助手席に座っている教官こそ指導員でなければならないのである。明朗塾の場合、運転手が指導員であり、助手席に座っているのが利用者である。助手席に座っているだけの利用者は、運転している教官を見ているだけで免許を取得できるのか、また運転している教官は交通ルールや目の前の障害物に注意を払いながら指導することができるのか。

 授産施設において利用者に対して工賃を支払うことは大切なことであるが、作業の対価が工賃であるという考えをもう一度考えてみる必要がある。例えば美味しいパンを作って、たくさんのパンを売るといった工程の中にどれだけ利用者に対しての作業指導を含んでいるのか。どれだけ工賃を貰えたかではなく、どれだけ仕事を教えて貰えたのかが利用者にとって重要であると考える。


[TOP]

6章 まとめ

6−1:障害者施設におけるケアマネージャーの必要性

 高齢者福祉のケアマネージャー(介護支援専門員)と障害者ケアマネジメントについてまとめてきた。ケアマネージャーは介護保健施設や指定居宅介護支援事業者には、一定の人数を配置しなければならず、介護保健制度をスムーズに運用していく役割を持っている。しかし障害者福祉においてはケアマネージャーは存在しない。介護を必要とする人に対してケアマネージャーが存在するように、支援と介護を必要とする障害者にもケアマネージャーは必要である。障害者ケアマネジメント従事者という資格は存在するが、まだまだ認知度が低く、私自身もこの資格を持った方に会ったり、講習会の案内等など見かけたことが無い。

 もし障害者福祉にも高齢者福祉のようなケアマネージャーが存在するのであれば、障害程度の判定から個別支援計画書の作成、個別支援の実施、個別支援の管理・調整までをトータル的に実施することができる。特に地域で暮らす障害者に対して複数のサービスを提供したり、コーディネーター的な役割もできる。

 個別支援計画書の作成に大変な時間と苦労を要した理由は、?@あらかじめ指定された様式の書式が存在しなかったこと。?A作成には資格を必要とせず、施設職員または指導員単位で支援内容について検討されていた。?B障害の種類や支援の範囲が広すぎることが原因であった。これらのことから考えてみても、各施設に1名以上は必ず専門的な知識(資格)を持ったケアマネージャーが必要で、その者が個別支援計画書の作成にあたるべきである。

6−2:おわりに

 今回、明朗塾での個別支援計画書作成に関わり、いかに利用者に対して明朗塾は、あいまいな支援を実施してきたのかを思い知らされた。しかも自分自身が個別支援計画書に記載する支援の内容や文章表現等についても恥ずかしいものであり、それだけ福祉の勉強が足りないということである。

 個別支援計画書がなかったから今まで明朗塾で良い支援ができなかったわけではない。個別支援計画書を作成するだけの能力が指導員になかったから、良い支援ができなかったと個人的に考える。

 今年、ケアマネージャー(介護支援専門員)資格試験にチャレンジしようと思い、通信講座を始めた。しかし今回の研究レポートにおいて、障害者ケアマネジメント従事者の存在を知り、この資格にも興味を持ち始めた。ケアマネージャーよりも先にこれを取得した方が、より専門的で効果的である。

 いろいろと理屈を並べてきたが、個別支援計画書を作成するにあたり、十分な作成時間と専門的な教育を受ける機会を施設側に要求したいと思う。


[TOP]

参考文献

『社会福祉用語辞典』
  社会福祉士受験対策研究会、棋苑図書、2000年2月

訪問介護員養成研修テキストブック 2級課程
  ミネルヴァ書房、2003年7月

『ケアマネージャー講座案内資料』
  生涯学習のユーキャン

障害者ケアマネジメント実践事例集
  北野誠一・大谷 悟・西岡 務 中央法規、2003年4月

個別支援計画をつくる 利用契約制度と障害者ケアマネジメント
  植田 章・峰島 厚 かもがわ出版、2004年4月

http://www.mhlw.go.jp/index.html 厚生労働省HP

『社会就労センターのモデル個別支援計画』
  全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会、2002年11月

『個別支援計画書の書き方とケース会議の進め方資料』
  松端克文 X日総研出版


[TOP]