2 カウンセリングとは
私はカウンセリングという言葉の正しい意味を知るまでは、クライエントがカウンセラーに悩みを打ち明け、何らかの助言をしてもらい正しい方向に導いてもらうこと、というようなイメージを抱いていた。決してそうではないことを知ったのは、明朗塾職員研修のなかでカウンセリングについて学んでからである。カウンセリングとは何はさておきカウンセラーがクライエントの話を「聞くこと」であり、自分の判断から助言をするということはないのである。では単に話を聞いて相手の気持ちを吐き出させてあげればよいのかと思いがちであるが、この「聞くこと」をマスターすることは何よりも難しいのである。これについては次の項目で述べる。
| カウンセリングとは ・ ・ ・
カウンセリングの語源は、「待つ」「共に考慮する」という言葉にあります。カウンセリング=相談と思っておれらる方が多いようです。「相談」という言葉のもつイメージは、「診断」「助言」「指導」といったことばであり、コンサルタントや身の上相談業務をされている方は、まさにこの相談業務を行っておられると思います。カウンセリングにも、この3つの役割は内包していますが、カウンセリング本来の役割は、助言、指導などは一切行わないのです。カウンセラーの役割は、クライエントとの人間的コミュニケーションを通して、クライエントの人間的成長を援助することにあります。
カウンセラーは、クライエントとの人間的なコミュニケーションをとるために「傾聴」を行います。実際、最初の数回のカウンセリングでは、ひたすらクライエントの言葉を「聴く」ことになります。
「聴く」ということは、「訊く」「聞く」とは違います。「訊く」とは言葉でいろいろとたずねるとか、質問するという意味になります。「聞く」とは、耳で聞くという物理的な反応です。
「聴く」とは、心の文字がはいっているように、相手のいわんとするところを心で受け止め、心で返すという意味が含まれています。話の知的な理解だけでなく、その背後にある感情を受け止めて理解することです。
優秀なカウンセラーである、カール・ロジャース(来談者中心療法を参照)は、カウンセリングによってクライエントのパーソナリティの変容が起こるには、カウンセラーの態度として次の3つの条件が必要といわれました。
(1)自己一致
(2)無条件の肯定的関心
(3)共感的理解
この3条件は、ロジャース派のカウンセリングだけでなく、ほぼ全てのカウンセリング技法の基本的態度として考えられています。
ホームページ「Mental laboratory〜心理カウンセラー儀助の心の相談室〜」より
|
このようにカウンセリングとはまずクライエントの話を聞くことが重要なのである(なお、上記引用文中に『「聴く」ということは、「訊く」「聞く」とは違います』とあるが、この研究レポートのなかでは「聞く」という漢字に表現を統一したい)。
『日本にカウンセリングが導入され、爆発的に広がったのは、ロジャースの「来談者中心療法」という理論』と東山前掲書のp135にあるとおり、上記引用文中にある来談者中心療法は日本のカウンセリングに大きな影響を及ぼした。
| 来談者中心療法とは ・ ・ ・
C.R.ロジャースが提唱。
ロジャースの人間観は「人間は、成長、健康、適応に向かう衝動をもち自己実現に向かう有機体である」。
ある特定の問題を解決するのではなくて、個人が全体として成長するのを援助すること、それによって、その個人がいまおよび将来の問題に対して、より統合的なやり方で対処できるようにすること。そのためには、個人の感情、情緒を重視する。過去をとりあげるのではなくて、「いま、ここ」でのその人のあり方に焦点をあわせる。クライエントは治療関係の中で成長体験が得られる。傾聴の基本的態度としてあげた3つの条件は「純粋さ」「無条件の肯定的関心」「共感的理解」。まずは、カウンセラーはクライエントに脅威を与えないで温かく接することである。そしてクライエントに受容的で許容的に接して、信頼関係を築くようにする。信頼関係ができクライエントが自己防衛する必要がなくなると、自己概念をかたくなに信じる必要がなくなってくる。さらに、信頼関係が確立されたら、カウンセラーはクライエント発言の感情表現を中心に鏡の様に反映し、クライエントの用いた感情表現をそのまま返す。クライエントは日常的に感じている気持ちをカウンセラーの繰り返しの言葉の中に聴くと、体験と自己概念に合わない部分が明確になり、クライエントがありのままの自分の姿を見ることができるようになる。つまり、自己知覚の見直しが始まる。体験と自己概念の比較が始まると、今まで気づかなかった不一致のいくつかの経験に気がつきはじめ、矛盾や葛藤をそのまま表現するようになる。クライエントの気持ちの一部に始まった混乱を言語化して話してみると、矛盾点がなおいっそう明確になり、再統合が必要になる。つまりここではいままで不一致であった気持ちはこのように統合され、新たな段階に到達するのである。カウンセリング面接の中で、このような結果は、不安や脅威から解き放たれ、最終的にはあらゆる体験過程に開かれ、機能する人間に向かって変化することが期待できる。
|
しかしこの来談者中心療法を日本人が導入した当初は、単にこれを鵜呑みにしてしまい「相談者からカウンセラーは何もしないし壁に話しているようだと非難を受けるはめになったりし」たのである。聞くことは理解することであるが、当時はただ聞いていて相手の心を理解しないという状態に陥ってしまっていたのである。受け身で聞くだけでは相手の立場に立って聞いていることにはならないのである。
ちなみに補足であるが、カウンセラー(=臨床心理士)の資格を取得するには指定大学院の修了が必要である。
カウンセラーと精神科医の違いは次のとおりである。臨床心理士とはカウンセリングや集団精神療法を行うための専門的な訓練を受けたうえで心理的社会的サポートを行っている人々を指し、精神科医とは、厚生労働省が認定する医師の国家資格を持ち、医学の専門家として診断と投薬、及び治療を行う人々を指す。クライエントによっては精神科医よりも臨床心理士の方が相談しやすいと感じる人もいるが、クライエントの社会的心理的問題の解決を援助する目的を持っているという点においては両者とも同じである。
日本の現状では、厚生労働省が認定する国家資格を持つ医師のみが、診断、投薬、治療をすることを認められている。臨床心理士は日本臨床心理士認定協会が認定しており、クライアントのニーズにあわせてカウンセリングや心理的サポートを行っている。また、たとえ他の国々で認定された医師の資格を持っているとしても、日本の国家資格を持った医師でない限りは日本で医療行為を行うことは法的にも倫理的にも認められていない。
|