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  4. 就労支援団体連合体年次総会

Workability International annual Conference

 平成30年5月25日~27日、スエーデンのストックホルムで2018年度のワーカビリティ・インターナショナル(各国の就労支援団体の連合体)年次総会が開催されました。社会福祉法人光明会の常務理事 内藤 晃は、日本から唯一の発表者として「一般労働市場以外で働く障害者への支援の重要性」のテーマで発表しました。以下、その発言内容を紹介します。

 みなさま、初めまして。内藤 晃と申します。本日、この発言の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。私は、一般労働市場以外の場で働く障害者への支援の重要性というテーマで日本の障害者支援のあり方について報告します。
 さて、私たちが働く目的は何でしょうか。収入を得るため、生きがいを感じるため、いろいろあるでしょうが、私は自分の望むスタイルで、(仕事の)仲間(同僚とは限らず)と力を合わせて、誰かを幸せにすること、これが「働く」ことであると考えます。そして、よい働きであるかどうかは、働いて得られる収入額で決まるのではなく、どれだけ周囲の人を幸せにしたいか、という目的によって決まるのであり、そのことこそが重要であると考えます。
 また、幸せかどうかは、受け取った量ではなく、他人に与えた量で決まると言えます。幸せの物差しは、幸せを求めることではなく、幸せを感じることです。そして貢献感が大切です。
 私たち支援者は、障害者に精一杯の支援をします。うまく成果に繋がらないこともたくさんありますが、貢献感に満ちあふれています。意欲的に仕事に向かう姿勢は美しい。

 障害者は、私たち支援者からたくさんの支援を受けます。それだけでなく日本の障害者は障害基礎年金、職業紹介や職業訓練、法定雇用率による職場の割り当て、費用の9割以上が税金によってまかなわれている障害福祉サービスなども受けられます。
 日本では、障害者雇用促進法に基づいた障害者の法定雇用率が課せられています。2018年4月から、民間セクションにおいては2%から2.2%になりました。しかし2017年6月調査によれば、障害者実雇用率は1.97%であり、達成には時間が必要です。法定雇用率に加えて、障害者権利条約から導かれる合理的配慮の提供義務が公的セクター・民間セクターに課せられています。
 日本の障害者の就労施策は、障害者総合支援法に基づき、主として就労移行支援事業により、有期限(2年間)の雇用支援が提供され、厚生労働省の発表によると、約35千人の事業利用者のうち、年間約10千人の障害者が民間セクターに雇用されています。
 一方で、離職者も少なくなく、JEEDの2017年の発表データでは就職して一年以内に、知的障害者の32%、精神障害者の50%が離職しています。
 その原因はどこにあるのでしょうか。
 退職理由を障害者に聞いてみると、厚労省の調査によれば、職場の人間関係の不調、賃金額の不満、病状の悪化等が挙げられます。
 しかし、私は、本当の理由は別のところにあるのではないかと考えています。つまり、退職した障害者は働く目的を理解していないのではないかと考えるのです。幸せが与えたものの量で決まるならば、誰かを幸せにしている実感に欠けているのではないでしょうか。その結果、幸せにしたい人の事情ではなく、自分自身の事情を優先して離職を選択しているのではないでしょうか。
 このように考える理由は、次のとおりです。
 我が国では、一般労働市場への就労を主体的に求めない障害者が多く存在します。一般的労働市場にこだわらずに「働く」ことに生きがいを求めている障害者です。彼らは最低賃金を得られる保証がないにも関わらず働くことをいといません。
 このような方々への就労施策は、福祉的就労として就労継続支援事業により展開され、そのサービスを利用する障害者は約250千人です。ここでは一般労働市場における労働者と同様の労働条件は適用されませんが、社会との接点や社会への貢献の実感を求めて働く場が保障されています。ここは、真摯に「働く」ことに生きがいを求める方々の活躍の場なのです。
 この現場で働く支援スタッフ48千人の多くは、生活支援と作業支援(多くは地域の消費者ニーズを満たす)の両立に果敢に取り組んでいます。
 働くことによって得られる報酬は「金銭」にとどまらず、経験、知識、技術、技能、情報、資格、信用、人脈、責任感、人生に仕事がある喜び等があります。一般労働市場で働かないからといって、決して敗者ではありません。支援スタッフは人生の成功は所得の多寡によって決まるものではないことを障害者から学んでいるのです。
 十分な金銭が受け取れるかどうかではなく、働いた結果、信用が得られるかどうかに評価軸を変えれば、福祉的就労として就労継続支援事業の価値が見えてくるのです。
 日本人は、歴史と文化に裏付けられた勤労を重んじ勤労者を敬う態度(勤労観)や、あらゆる職業の意義を敬う態度(職業観)を大切にしています。「一生懸命に働くことは尊いことだ」という価値観を日本人は共有しており、だからいくつになっても働ける限りは働くことを素晴らしいと感じ、アーリーリタイヤをよい生き方とは感じないのです。そこでは仕事に対する態度を育成する「職業教育」が重要なキーワードとなっています。
 今後、人生100年時代を迎え、障害者雇用や障害者支援のあり方を変えていく必要が生まれます。AI時代の到来により、障害者の働く職種にも大きな変化が到来します。その上日本は少子高齢化という問題にも直面しています。
 しかしながら私は、障害者が一般労働市場で働くことを求める社会のあり方を変革するヒントが、我が国の福祉的就労の形態の中にあると確信しています。障害者は私たちが見過ごしてしまった異なる価値観を持っています。彼らの懸命に働く姿は美しい。彼らは、働く目的を思い起こさせてくれます。また人生の価値を教えてくれます。真の価値は目には見えないものなのです。
 その現場で働き、障害者から学び続けるスタッフは、他を愛し、幸せにする挑戦を積み重ねています。そしてこれこそが真の仕事である、これこそが自らの責任であると強く確信しているのです。このようなスタッフの存在こそ、日本人の矜持です。
 働くことの本質を学ぶことができるという意味からも、一般労働市場で働かない障害者への支援は重要です。
 ありがとうございました。