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  4. 理事長挨拶

第二創成プロジェクト発進

社会福祉法人光明会 理事長 小澤 定明

平成30年度経営方針を発表

 社会福祉法人光明会では平成30年3月17日に「平成30年度経営計画発表会」を開催しました。
この経営方針は、社会や制度の変遷に対応し続けてもなお、我が国の先人から受け継ぎ、それを後世に伝えるべき日本人としての本義(根本的なあり方)を守り続ける意志の表明です。
 我が国の福祉制度が従来の延長線上にあり続けることはなく、人口減少(少子高齢化)社会に直面するなか、過去30年にわたり国民の意識が、モノの豊かさよりも心の充足を大切にする「心の時代」にシフトしています。光明会は、これらの変化に対応して、事業の中心を「様々な能力のある方々(Different Capabilities)」に「人生に仕事がある喜び、仕事のある充実した人生(仕事道)」を創造する「人生指南」に置きます。さらに「他から受け取ったものへの感謝を原動力として他に尽くし与える社会貢献」「果敢な廃棄を通じた新しい価値の創造(イノベーション)」「人間性を高める挑戦」を美しい人間としての誇りを持って実践していくために「逞しい健全性をもって徹底的に考える力を身につけがむしゃらに行動する」を基本に平成30年度の経営方針を策定しました。
 経営方針を基に、各事業所では行動計画の立案を進めています。新年度開始早々にはこの両者を統合した経営計画書を発行します。ホームページ上でも4月下旬までには公開します。
 以下、特に前年度までと異なる点について申し上げます。

第二創成に向けて

平成10年(1998)10月に千葉県知事から設置認可された光明会は、平成35年(2023)に創立25周年を迎えます。平成35年度を一つの区切りとして、続く平成36年度(2024)以降を光明会の第二の創成と位置づけることとしました。それへ向けて平成30~34年度の5年間を新しい創成への準備期と位置づけました。第二創成の目的は次の25年間(平成60年(2048)まで)のあり方を問い、継承すべきもの、改めるべきもの、廃棄すべきものを見極める力を光明会に備えさせることにあります。
 平成30年度は、この準備にあたるプロジェクトを発進させ、具体的には品質マネジメントシステム(QMS)の再構成を追求するためにISO9001の再認証を目指します。当面の推進体制は、当法人のリーダー会議である「志推進会議」に併置します。
 光明会の福祉事業運営においては、合理的な成果主義を追求すべき部分も存在しますが、その中においてさえ、非合理な「理念経営の道」を究めなければなりません。QMSは効率と成果のためではなくむしろ、理念経営の実現のためにこそ活用すべきものという考え方に基づいて、ISO9001の再認証は第二創成プロジェクトの重要な柱の一つとなるでしょう。
 またこの第二創成プロジェクトにおいては、光明会が誕生した八街市大字八街字元光明坊の歴史的意味を探る研究を進めることとします。経営方針で、我が国の先人から受け継ぎ、それを後世に伝えるべき日本人としての本義を守り続ける意志を示しましたが、縁あってこの地に生きることとなった「社会福祉法人光明会」の存在意義を歴史的に辿りたいという思いがあるからです。

就労支援事業の成果は工賃額としない

 就労支援事業(就労継続支援事業B型の作業科目)は、配食・ケータリング、ファーム、ファクトリー、請負作業(施設外就労を含む)で構成します。前三者は地域の方々(消費者)がお客様であり、請負作業は発注企業がお客様です。このお客様は誰かという視点をはっきりさせた上で、就労支援事業の成果の姿は、お客様の満足を求めるB型の利用顧客が主体的に設定した目標の達成とします。これは工賃額そのものではありません。30年度からの障害福祉サービスに係る報酬改定により、B型の事業報酬は、前年度の支払工賃額によって大きく規定されることとなりました。これは支払工賃額がB型事業の成果を計る指標として全面的に採用されたことを意味します。しかしながら、B型事業の成果は、その事業の利用をされる契約者(様々な能力のある方々)の幸福でなければなりません。受け取る工賃が高ければ幸福度も高いという考え方には、当法人としては賛成できません。法人の使命としても社会貢献、他から与えられたものへの感謝、社会に勤労観(勤労を尊ぶ態度)を伝道することを位置づけているのです。人のために尽くしたかどうかを問わずに、自分が欲しいものを受け取れたかどうかを問う思想には、やはり受け入れがたいものがあります。
 製造品を購入される地域の消費者の買上金と発注企業の発注額の合計が、平成30年度以降の事業報酬算定の基礎となるとしても、工賃はB型の利用顧客にとっての目的ではなく、自ら設定した目標を達成できたかどうかの結果を示すものなのです。

自主的目標設定を引き出す報酬規程

 報酬規程は、この目標設定及びその達成を目指す態度とプロセスを評価するものでなければなりません。個々の利用顧客の働く意欲と態度を育てるための見立てと個別支援計画に基づく評価は、報酬規程に従うからです。また報酬は金銭のみではないことを明確に定義するとともに、見えないもの(敬意や承認、権限付与)を見えるもの(お金や物品)以上に大切に考える規定を含まなければなりません。
 作業評価(利用顧客の行動に対する評価とともに職員自身の支援に対する評価でもある)の基準として、働く意欲と態度を育てるために生産工学の観点から菅野敦東京学芸大学教授の提唱する、態度の獲得レベルを示す「働く態度の6領域」を踏まえた作業環境調整と作業指示を前提としなければならないことは言うまでもないでしょう。
 就労支援事業のうち特にファーム事業(農産物の生産・収穫)は「命を育む」「命をいただく」という人類生存の根本を自然への畏敬の中で展開する農業実践の場です。また、農業の基本的意義は国土保全にあります。命を育む良好な農地を次代に継承することです。法人立地の優位性を十分活かし地域活性化の先駆けとなることにより地域コミュニティの醸成を目指すことで、就職の場を第1次産業へ拡大展開することが可能になるのです。農業のプロ育成プログラムの開発と「人生に仕事がある喜び」を提供し「仕事のある充実した人生」を創造する「人生指南」との融合を図る体制づくりがファーム事業の取り組むべき課題です。最近よく目にする言葉に「農福連携」がありますが、後継者が不足する農業労働力に障害者の労働力を充当するという手段に目を奪われることなく、良好な国土・自然を次世代に継承するというあるべき姿をしっかりと見据える必要があるのです。

生活関連支援の成果

 生活関連支援は常にお客様の価値観の尊重を基本としなければなりません。当たり前のことと期待される支援のレベルを超えるには、お客様の価値観での期待値が把握できなければならないのです。様々な能力のある方々にとって心の拠り所となり、驚きと発見がある支援を展開するには、常にお客様に向けた意識と温かい眼差しが必要です。  生活関連支援の目的は、お客様の心を磨くところにあります。一人ひとりのお客様が人間性を高め社会貢献に真摯に取り組むには、感謝と報恩の心が不可欠ですが、それは日々心を磨き、己に克つ行動の積み重ねが欠かせないからです。しかし人間は弱い生き物です。自分に甘く、しかし他人に厳しく迫るものですから「時を守り 場を浄め 礼を正す」ことが心磨きの指針となるのです。  知的障害や精神障害による強い不安からくる言動は、支援者を含めた周囲からは理解と受容が難しく、それが故に支援計画が立てにくい面があります。お客様の発するメッセージが読み取りにくいからです。しかしながら福祉専門職としては、この状態を放置してはならないのです。様々な能力のある方々の思いを理解できないまま「これが障害である」と片付けてしまうことは、支援者としての敗北でしょう。   特に自閉症スペクトラムに関しては、TEACCHの療育技法の根底にある理念・哲学の理解が求められます。すなわち、保護者のニーズとの調整、社会への適応力向上を目指した本人または環境側からの調整、徹底した個別対応の前提として必要となる診断・評価、本人が社会適応力を身につけていきやすくするための環境設定の工夫(構造化)、認知理論と行動理論の活用、達成感そのものが動機付けになる(そのために相互の敬意と好意が不可欠となる)レベルの課題設定、しかし本人への関わり方を特定の分野のみとせずに全体的にそして生涯的に見ていく視点等をもっての支援のあり方の追求と試行錯誤を繰り返しての行動実践といったトータルな観点が大切なのです(内山登紀夫『本当のTEACCHTEACCH』学研 2006より)。併せて支援実践者から素直に学び、強い不安が取り除かれたお客様の安寧の笑顔を求め続けよう。

成長目標に「平均値」を使わない

 個別支援計画は、職員による徹底した個別対応の意思表明です。個別支援計画に盛り込む職員の行動計画が目指す「目標」は個々異なるものですが、それは、様々な能力のある方々が周囲の期待に応えてみんなと同じようになるためのものでは決してないのです。「目標」に「平均値」を潜り込ませてはならない。それは平均的な人間は誰もいないからです(トッド・ローズ『平均思考は捨てなさい』早川書房 2017.5 より)。となると、すべて同じフォーマットで個別支援計画書を作成することは既に誤りであることに気づかなければならないことになります。この意味で個別支援計画に見直しを追求しよう。個別支援においては、個性重視と成果重視・組織目的重視(効率性重視)との間で思い悩むプロセスを切り捨ててはなりません。行動の評価は可能ですが、それをもってその行動をした人の評価に直結させてはならないのです。また人間の才能には、複数の側面があり、それを家族や仲間と補完し合うことで成果が上がるものですから、個別支援計画の焦点を対象個人にだけ当てているのも不十分であると言わざるを得なくなります。さらに人が見せる特質は個性とともに、置かれた状況に応じて変化するから、職員が目撃した姿は本人の一面に過ぎないのです。成長のスピードもキャリアアップのルートや学びゆく順番もまたその最適は人により異なるからです。

光明会のキャリアデザインの本義

 光明会の最高の財産は人です。そして組織内に留まらず地域社会の人財育成こそ組織の使命に通底するものです。この役割は全職員で取り組むべきものですが、その責任は小澤啓洋事業総括管理者が担い、キャリアデザイン部がその開発と運営を所管するものとし、次の3つの系に整理しました。

コミュニケーションデザイン系 人と人との関係をよいものとし、協力関係を作り上げること
ライフデザイン系 法人職員を退職したあとをも含めて人生の豊かさを保証すること
キャリアデザイン系 光明会における職務能力・態度の向上を引き出すこと

 キャリアデザイン部の使命は人事に関するドラッカーの5つの問いに基づくものとします。すなわち「①われわれが必要としているのはいかなる人たちか ②最高の力を発揮してもらい、最大の貢献をしてもらうための手だては講じているか ③組織の構造とプロセスは人への敬意を反映しているか ④知識は十分に活用しているか ⑤人への投資は行っているか」です (エリザベス・イーダスハイム『P・F・ドラッカー 理想企業を求めて』ダイヤモンド社 2007 p145) 。
 キャリアデザイン部の所管すべき業務をまとめると次のとおりとなります。

(1)コミュニケーションデザイン系

 法人職員の人と人との関係をよいものとし、協力関係を作り上げるための意思疎通に関するデザインを担います。具体的には、パワーアップミーティングや各種会議など職員が一堂に会しての意思疎通の場と、サイボウズ等ICT運用開発を通じての意思疎通の手段を充実させます。このほか、法人ホームページや広報紙など、外部へ向けての情報発信と意思疎通についても関連委員会とともに担当します。  内部研修として、山口諭指導員による「オーナーシップとコミュニケーション講座」を実施します。

(2)ライフデザイン系

 法人職員としての人生の質を高め、それは職員を退職したあとも続くよき習慣の獲得を含めて人生の豊かさを保証することを担います。法人職員のライフワークを支える職場衛生委員会、書斎のすすめ、光明木鶏会、おざわ塾についても関連委員会等とともに担当します。中平裕子指導員によるキュレーター(博物館・美術館などの作品収集や展覧会企画という中枢的業務を担う専門的研究職員)としての能力や禅、茶道の修業の生き方、箱田哲朗指導員の映画鑑賞に関する経験等に力を借りて内部研修等を充実させます。また、職員研究レポート支援チームを組織します。

(3)キャリアデザイン系

 法人職員の採用については、採用・人事会議を置きます。採用から入社後3カ月までの間の職員を対象とする研修プログラムや効果測定方法を開発します。職務遂行に必要な技能を必ず修得するためにOJTのプログラム化をはかり、自己評価とトレーナー評価の乖離をなくすことを目指します。
 法人職員のキャリアアップのための研修やキャリアパスの設計を所管し、職員教育計画を企画し実施します。法人職員の技術・能力と態度は分けて評価することで成長を求め、法人職員としてのあり方としての態度については、獲得すべき態度のレベルを明確にして定期的評価を実施します。
 外部研修のほか内部研修(パワーアップセミナー企画)や自分の教科書支援を関連委員会等とともに担当し、内部研修として、木内正弘キャンパス長による「認知行動療法・入門編」及び「カウンセリングマインド講座」を継続実施します。
 平成30年度は、業務ハンドブック編集(法人理念、支援原則、事業(業務)の進め方、連携協力、キャリアアップを含む)を完成させるものとし、また、資格取得支援チームを組織します。

社会福祉法人の存在価値は地域の人づくりにある

 社会福祉法人の存在価値は、地域の人づくりにあります。人づくり(人財教育)は、自組織のためではなく地域のためなのです。光明会はこの立場で法人経営をします。
 人間が、天命を受け、それを全うする唯一の条件は「徳」であり、徳が人間の最高の品性です。芸術的才能や技術的才能、またそれを上回る価値のある「努力」によって事業の成果を得ることは、品性の高い人間を育てゆく条件です。
 徳を身につける道が修行です。現代社会においては、それが「仕事」なのです。光明会が人を採用し人を育てるのは徳性を身につけた人間を世の中に広げるためです。
 人のためとは、その相手にとっては自分のためになるのかといえばそうではなく、その相手にとってもまた、そのまた次代の誰かを導き、共に手を携えることにつながるのです。そのようにはるか昔の先人から今の自分まで感謝と報恩は連綿とつながっているのです。この連続を自分で断ち切ることはしてはなりません。
 人は、ときとして悩み苦しみ、生活に困窮することがありますが、全ての苦しみが成長の糧であるならば、憂うるべきは困窮ではなく、徳を持って天命を果たしていく気概の喪失です。世のため人のために幸せを届けていないことです。挑戦する勇気をふり絞り、あらゆる経験を積み重ねよう。勇気の発揮を保障するものは、日本人としての矜持なのです。
 他人を幸せにして生きることこそ幸せの本質です。他人の幸せを純粋に、素直に喜べる品性を身につけて日々を送れるときに「絆」が生まれます。そのために徹底して考える力を身につけて、進んで喜んで困難な道を選んで行動する人生をともに歩もう。
 職員が取り組んだ優秀な研究レポートの成果により、本経営方針の内容の多くは構成されています。この経営方針を通じて、すべての法人職員が人生のいっときを光明会にかけて自らの使命を果たす決意を固め、この経営方針に基づく活動計画(アクションプラン)づくり、そして真心を込めた実践に続くことを期待します。

(経営方針の全文は平成30年4月末に法人HPにて公開します。 http://www.meiroh.com)