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  3. 第68号
  4. オピニオン倉田知典氏寄稿

本ものの良い意味とは隠れている
気付けた時が人らしくなっていく……。

倉田知典 http://www.skz.or.jp/taiwa

 とある地域の一般のスポーツ大会(運動会なようなもの)に参加させて頂いた。私は、もちろん応援組(笑)で、出場は考えもしなかった。しかし突然、「倉田さん、パン食い競走の出場名簿に載せたからね」と、仲間からお話を頂いたのだ。私は「え? 走れないですよ…大丈夫なんですか?」と伺った。すると仲間が「健常な方の中でも足腰を痛めていて、走れない方も出場をするし、倉田さんは参加することに大きな【意味】があるんだよ」と、話されたので、私は了解したのだ。パン食い競走に参加させて頂いた私。もちろん結果はビリ……。パンは頂けて良かった(笑)。
 数日後、仲間から「倉田さん、車椅子なしでパン食い競走に参加して、その日は丸一日、独歩でしたよね。みんなさんが、ずいぶん驚いていたよ。そんなに歩けるようになったことを、喜んでいたよ」と仲間からお話しを頂いた。確かに当日は座りたくなく、歩いていたい気持ちになっていた。ずっと立ったり歩いたりしていたことが、私も嬉しかったのだ。1年前では考えられなかったことである。
 また仲間がこんな話しをした。「小学校低学年の子供が、ビリになるのが好まないと、スポーツ大会で言っていたんだけど、倉田さんの姿を見て、ビリでも楽しそうに歩いていると感じたようだよ。その後、その子供はビリでも良いと思ってくれたし、周りのみなさんに、いつもと違う笑顔と優しさで接し、楽しく触れ合っていたよ」と、笑顔で話してくれたのだ。そして仲間が「実はね。数年前、ある会合があって、倉田さん その場に参加していたよね。その時に、夜遊びしてどうしようもない、不良少年が参加していたんだ。遠くから少年が倉田さんの姿を見ていて、その少年が俺は五体満足なのに今まで何やっていたんだろう……と、倉田さんの頑張っている姿を見て、反省させられたって。その後、少年は更生し、今は立派な社会人として真面目に活き活きと生活しているよ」と話したのだ。
 私は仲間から、このような話しを聞かせて頂き、私の知らないところで、私のことを良く見てくれている方がいて、その方が人間らしい温かい方(心)になって頂けたことにとても嬉しくなった。肢体不自由の私だが、不自由な体と姿を見て頂き、相手が自由な良い心になれたことは、何よりもありがたい。そして私自身が、心と体を人として尊く大切にして生きたい、と謙虚さと感謝の気持ちを深め、生きることの自信に、改めて深く気付かせて頂いたのだ。まだまだ至らない未熟な心の持ち主の私であっても、自分がいるだけで、人(相手)の心に良い変化を与えさせて頂けて、思わず潤っと涙が出た。仲間の話しはありがたく、感謝と感動で嬉しい気持ちになった。
 思えば過去を振り返ると、私は体が不自由だからこそ、何か大きな良いことをして、良い私になりたいと、いろいろな活動をしてきた。しかし花火のように継続性はなく、その場限りで、終わることが多かったような人生(心)だった。
 これからは、裏方で出来ることも多く探し、頼まれたことは快く引き受け、心から実践していきたい。小さくても良いので、コツコツと継続性のあることを頼まれるような、信用が厚く深い私の心を作っていきたい。
 それには自分ではなく、まずは相手の気持ち(心)に合わせて、深め合い、さまざまな立場の多くの方と、感謝の気持ちで歩ませて頂きたい。
 日々過ごさせて頂く中で、どんなことでも尊い【意味】がある。その意味を深く感じ、分からせて頂く私になりたい。そのことで、人や世の中の尊さが見えてくると感じる。それは、さらに人への感謝を深め、生きる楽しさにもっと多く気付いていけると思う。
 隠れた【意味】に気付き、さらに人生を心豊かにさせて頂きたいと思っている。

倉田 知典(くらたとものり)

 1970年3月29日生。1999年より自ら足の指を使いホームページ(「見かけは不自由『心は自由』」)を作成し、日々の生活の中で思いついたことを書き始めた。数ヶ月近く更新を続けるうち、ホームページを見た人々から多くの反響があることを知り、2005年の暮れから本格的な詩の創作活動を開始した。
 2011年12月から社会福祉法人光明会広報紙の契約ライター。