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  3. 第67号
  4. オピニオン倉田知典氏寄稿

本当の優しさとは・・・いつかは気付いて頂けるはず

倉田知典 http://www.skz.or.jp/taiwa

 私の知人のBさん(他県に住んでいる)は車椅子生活で、1人暮らしをされている。約2年間、Bさん宅にヘルパーとして、Cさんという方に来て頂いていたという。Cさんは義理と人情があり、話しをすれば良い方であるそうだ。
 しかしBさん宅に入ると、実に細かい。一般の主婦の方も気にしないような台所の汚れや、ふつうは気付かないトイレや電気機器などの汚れまでも見逃さない。CさんはBさんに対して、そこが汚いと言いつつ、BさんがCさんに色々な家事などをお願いすると「面倒だ」などと言われ続けたそうだ。Bさんは時々、お酒を呑まれるそうだ。Cさんもご自分の家で、仕事などが無い日は1人で晩酌されるという。CさんはBさんがお酒好きということを理解しているとのことで、Bさんに飲酒介助をすることも少なくないそうだ。たまにBさんは深酒して酔うこともあったという。その時Cさんから言われることは「うちの父に性格が似ている」との話し。それはお酒を呑まない時であっても、その言葉はよく言われたそうである。Cさんが言うには、何も出来ないのにカッコつけた発言がBさんにあり、そのことが、お父さんと、そっくりということのようだ。
 BさんとCさんはそのような理由から、つい感情的になり口論を何回か繰り返したことがあったという。しかしBさんはCさんのキレイ好きな点と、人情的な部分を学んで行きたいと考え、Cさんの良い心をよく見ることに努め、長くCさんにヘルパーとして関わって頂いていた。
 しかし、もう口論は互いに辞めようと話し合って、和解した後も、また小さな口論に発展してしまった。そこでBさんはCさんに対して、「何で細かい所まで、そんなに突っかかって来るのか。私の家なのに楽に過ごせない。正直にCさんの思いを話してほしい」と、お願いしたという。
 するとCさんは「Bさんには様々な友達や仲間がいてうらやましい。私には、お金や物を上げないと友達は相手にしてくれない。だからBさんがうらやましくて意地悪を言いたくなる。しかし、それと同時にBさんがなぜ人に好かれているのか、この数年間、学んでいた。Bさんと過ごす中で、私は成長出来た」と、本音で話して頂けそうだ。
 Cさんの家庭は、お父さまが自営業で、Cさんは後継ぎの立場である。家庭が複雑であるようだが落ち着き始めている。お父さまと仲は悪くないようだが、まだ後継ぎになれない何かがあることは、Bさんはずっと感じていたようである。
 BさんはCさんに、長年続けて頂き、また本音で語れたこともあり、このままヘルパーとして来てもらいたいという思いと、やはり後継ぎとして実家に目を向けてもらうためにヘルパーを辞めてもらった方が良いという思いがあり、様々な葛藤があったようである。また辞めてもらっても、後継ぎにさせてくださいとお父さまに言えず、また別のことを始めることも十分考えられる。余計なおせっかいだとも、思われたくない。これはCさん自身に気付いて頂くしかない。しっかりとした後継ぎになって頂きたいという願いから、BさんはCさんに別の口実をつけて、互いに相談し合い、辞めて頂くことを決心されたそうだ。
 ヘルパーも残すところあと数回となり、Bさんが実家に帰れていない現状をCさんは察していた。「私のヘルパーの仕事を減らして、 実家に帰りなよ。ずっと帰って無いでしょ。親孝行してきなよ」と、逆にCさんから言われて涙が出る程、嬉しかったBさん。Cさんにはとても感謝していると話す。
 Cさんもいつか、お父さまの後継ぎになれることを願い、良い親子関係となれるよう心から思っているというBさん。
 本当の優しさを見せるために、辞める決断を取ったBさんの思いがいつか伝わり、願いがかなえられるようになれると良いなと、Bさんから私は話しを伺った。私も同様に感じさせて頂いている。

倉田 知典(くらたとものり)

 1970年3月29日生。1999年より自ら足の指を使いホームページ(「見かけは不自由『心は自由』」)を作成し、日々の生活の中で思いついたことを書き始めた。数ヶ月近く更新を続けるうち、ホームページを見た人々から多くの反響があることを知り、2005年の暮れから本格的な詩の創作活動を開始した。
 2011年12月から社会福祉法人光明会広報紙の契約ライター。