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定着支援の手厚さこそが
新規雇用につながる本物の鍵である
就職するなら明朗塾 総括施設長 内藤 晃
障害者雇用の現況・実雇用率1.59%に
平成10年から現在までの法定雇用率(障害者雇用の目標値)は1.8%ですが今年平成20年6月1日現在の障害者実雇用率(実際の雇用率の測定値)は1.59%でした。昨年の実雇用率は1.55%でしたから雇用率は微増していますが、障害者数に換算して約12万人の雇用不足が法定雇用率達成までに存在するということです。
過去30年にわたり障害者雇用促進法による法的義務(すべての事業主は、社会全体の理念に基づき障害者雇用に関して共同の責任を負う)である法定雇用率が達成されたことはありません。いわば不法状態が続いているのです。
企業に対して社会的責任やコンプライアンス(法令遵守)を求める風潮が格段と高まっている昨今、企業に対する法定雇用率達成の圧力は強まっています。雇用率未達成の企業はとくに不安感を持っているのです。
大企業のなかには、特例子会社の制度を活用して法定雇用率を達成している割合が多いのですが、この制度を活用できない中小企業向けの特例子会社制度(事業協同組合等を活用して中小企業が共同で障害者を雇用する場合に、当該中小企業が雇用した障害者を当該事業協同組合等が雇用した障害者とみなし、一括して雇用障害者数を算定する特例を設ける制度)が求められています。
この制度は障害者雇用促進法の改正案に盛り込まれ、前国会から今国会に継続審議となっていますが、残念ながら今国会においてもいまだに審議日程が未確定という状態です。ということは改正案では来年4月からの施行となっていますがその遅延が予想されるのです。
就職に向けて支援者(家族・支援スタッフ)に求められること
このような状況下において、障害者の就職に向けて支援者にはどのような考え方が必要になるのでしょうか。
まず重要なことは、「本人・家族・支援スタッフは役割分担の関係」と考えていくことです。とかく家族・支援スタッフは、本人を励ますことに主眼を置きがちです。そうではなく(励ましが不要というわけではありませんが)家族にしかできないこと、支援スタッフにしかできないことに着目していくべきなのです。役割分担ですから、相手の力に応じてこちらの力の入れ方を変えることが大切です。こちらの力に合わせて相手に協力させることではありません。とくに支援スタッフが心に留めなければならないことは、自分の支援スキルの未熟さに気づかないまま、本人・家族に努力を強いてはならないということです。
つぎのポイントは、障害者がバリバリと働く姿、働く職場を見ること、感じることが大切だということです。この熱を感じなければ支援する側の腹が据わらないからです。ただし当然のことですが、支援スタッフや家族は努力して本人の働く姿を見ようとしなければ見られません。
つぎは、支援スタッフにとって大切な点を確認しましょう。
まずは、今後は特別支援学校の大規模化が進むということです。千葉県においては、とくに流山高等学園(高等部のみの特別支援学校)は県内唯一の職業学科ですが、全県学区なので卒業後・退職後のフォローアップをすべて学校が担うには無理が生じます。そこに福祉施設の支援スタッフの新たな役割(つまり特別支援学校の先生の代替ができるかどうか)が決め手になるということです。
特別支援学校との連携の取り方を常に改善し続ける姿勢が支援スタッフには求められます。たとえば、地域意見交換会にしっかり参加できているか、学校の実習に就業・生活支援センターが協力しているか、などの点検と対応に重要性が増してくるのです。
定着支援のあるべき姿とそのヒント
障害者雇用の難しさの本当の姿は「就職」の難しさではなく、「勤続」の難しさにあります。障害者雇用に関する調査についても就職後半年までが対象となり、長期にわたる勤続のための支援については、なかなか光が当たらないのが実態です。
そこで「就職するなら明朗塾」では『定着支援の手厚さこそが新規雇用につながる本物の鍵である』という新たなスタンスで就職支援に取り組むこととしました。
まず面接してから正式雇用までの間を「第1期定着支援」と位置づけました。この間にはトライアル雇用の活用が主たるポイントとなります。あくまで実習は雇用とは異なるのです。企業にとっては給料を支払うという覚悟が障害者雇用には不可欠です。仕事が本人に合う(マッチングする)かどうかは、面接や実習程度では分からないことがあるからです。また障害者自身にとっても給料をもらわないと分からないことがあるのです。給料をもらうようになってはじめて「ほんとうに仕事が好きになる」ことができるのです。仕事が好きになれば仕事に来るのが早くなるので、このような勤務態度から仕事に全力投球する準備が整ったかどうかが判断できるのです。
つぎに、正式雇用以降が「第2期定着支援」です。企業の中には雇用したからには定年(60歳~65歳)まで働くことを想定しているところがあります。安定雇用、継続就労は企業の望みなのです。一体支援者は、そこまで考えた定着支援をしているでしょうか。つまり何か問題が生じたときに、その問題に対する当面の対応(別の表現をするならば問題を先送りする)だけで済ませてしまうことがありはしないでしょうか。定年まで勤続するためには、という視点を持つならば相当異なる対応が生まれるはずです。このような発想をすることで強い定着が生まれるのです。
障害者労働者へのアンケートで仕事を継続する理由を問うと、[1]会社のスタッフ(指導員)が好き、[2]仕事の仲間が好き、[3]会社(仕事そのもの)が好き、という回答が得られます。このアンケート結果から導き出されることは、定着支援の視点は、会社の上司との人間関係を良好に保つこと、会社の同僚との人間関係を良好に保つこと、が仕事そのものに対するスキルアップ支援より優先すべきだということが見えてきます。と同時に支援スタッフとの人間関係を良好に保つこともまた仕事支援に優先するということなのです。
支援スタッフは、障害者雇用になかなか理解を示さない現場社員にこそ密にフォローする、そのためには、定期的に会社訪問をするためのツールを開発することが必要になるのです。
起こってからではなく起こる前に
八千代市のビック・ハートでは障害を持つ労働者に起こるライフイベント(例えば家族の死とか親の離婚、結婚、失業、妊娠、転職、生活条件の変化、上司とのトラブル、仕事時間の変化、転居など)から本人のストレス状況を先読みして訪問計画を作成する取組みを始めています。雇用後になにか問題が起きたとき、即時対応(訪問予定日時の即答・確約)で安心提供のシステムを作り上げることは大切ではありますが、それだけでは不十分なのです。アクティブな(能動的な・こちらから働きかける)サポートシステムを開発していく必要があります。
このような定着支援の役割は「障害者就業・生活支援センター就職するなら明朗塾」だけで担うにはどうしてもマンパワーに限界があります。障害者雇用の実績が増えていくにしたがい手厚い定着支援ができなくなる可能性が高まるからです。にも関わらず企業(や本人・家族)から過大な期待が寄せられるわけで、このことにどのように応えていくか、という発想が大切になります。
支援は複数で行い客観性を持たせること(セカンドオピニオンの活用)、家族支援の視点も併せ持たせること、などが定着支援のあるべき姿のヒントといえるでしょう。
