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法の精神と福祉の精神

社会福祉法人光明会 理事長 小 澤 定 明

 内閣総理大臣が辞任しました。日本の行政権の長であり、あらゆる行政を総理する大臣が発揮できる最後の権利が「辞任」だとすれば残念です。障害者自立支援法の施行後3年の見直しにより障害者福祉施策が抜本的見直しを受けているこの時機に政局が不安定になりました。
 「法の精神」とは、法は何のためにあるのか?という法の目的を明らかにした言葉です。それは基本的人権の尊重です。すべて法は何のためにあるかといえば権利擁護のためなのです。だから法を解釈するときに曲解し、権利侵害を引き起こすことを「法の網をくぐる」といい、人間としてアンフェアなことですから社会から糾弾されることになります。
 「福祉の精神」も同様です。福祉は何のためにあるかといえばそれは、基本的人権の尊重のためです。障害者や高齢者やこどもといった社会の弱者の権利に限らず、すべての人を包含した基本的人権の尊重です。これが福祉の目的です。
 だから福祉制度の改変は、いつでも昨日より今日の権利保障が充実している、今日より明日の方が希望の持てる日が来るというものでなければならないのです。これが福祉の理念です。これに反することはやはり「法の網をくぐる」行為と同等であり、人間としてアンフェアなことですから社会から厳しく非難されるのです。
 この国家の福祉理念をどのように実現するかが政策に現れます。福祉社会をどのように実現するかの道は一本ではありません。そこにはその国の時代背景や歴史・文化といったものが色濃く反映されるのであり、だからこそ外国の制度を導入すればそれで事足りるというものでもなく、福祉の現場から力強く声を上げていかなければならないのです。
 日本の福祉は、日本でしかできないものでなければなりません。そしてその上でそのための方策を競い合うような議論が必要です。障害者自立支援法の施行後3年の見直しの論議は、社会保障審議会や各種団体で様々にされています。福祉社会の実現に向けて競い合うような政党政策(マニフェスト)に期待したいものです。ここしばらくは国の政情は不安になるのでしょうが、将来になって、日本の福祉を議論していくためには必要な時期だった、といわれるようにしなければなりません。そのために現場のスタッフ一人ひとりが今できることは何かを考えていくこと、その議論を積み上げていくことが求められているのです。